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2016

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(その2:あえてもの申す)

ネタバレが含まれています。必ず映画をご覧になってからお読みください。

トガジンです。

先週IMAX3Dの大画面で浴びるようにして2回観てきた作品です。
人知れず散ったローグ・ワンの面々の魂が、その後も反乱軍の中に生き続けていると思うと涙が溢れてしまいました。

しかし、違和感も無かったわけではありません。
今日はそれを確認する目的もあって3度目の鑑賞をしてきました。

今回観たのは2Dの吹替え版です。
『スター・ウォーズ』シリーズにはあの世界独特の固有名詞が多くて、字幕の限られた字数では表現しきれていない場合が多いので一度は吹替え版も観るようにしています。
また、3Dについてはそれほど効果を活かした演出にはなってなかったうえに、一部2D→3D変換がうまくいっていない箇所もあったので本作の鑑賞は2Dだけでいいように思います。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(吹替版)
(劇場:福井コロナシネマワールド)
ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー ポスター

私にとって『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は「もうひとつのスター・ウォーズ」などでは決してありません。
『帝国の逆襲』に次ぐシリーズ中屈指の傑作であり、れっきとしたエピソード3.9だと思っております。
何故オープニングにいつものような文字が流れず、ジョン・ウィリアムズが音楽を担当しないのかとさえ思います。
この作品の存在によって、『スター・ウォーズ』の、とりわけオリジナル三部作への造詣がより深まることは間違いありません。

でも、観ていて疑問に思う部分や違和感を拭いきれない部分がいくつか存在することも事実です。
そのうちのいくつかを挙げてみることにします。

【食事するシーンが全く無い】

ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー メンバー
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を観て感動のあまり涙を抑えられなかった私ですが、実はこの映画の登場人物の死に様に対して泣いたのではありません。
むしろローグ・ワンのキャラクター達には、今一つ感情移入しきれないところがありました。

今回、IMAXではない普通の映画館で落ち着いて観返してみることでその原因の一部が分かりました。
この映画には、登場人物が食事をするシーンが一つもありません。
それはすなわち、彼らを同じ人間として感情移入するための接点が見つけにくいということであります。
残念なことですが、これはこの映画における大きな欠点だと思います。

架空のキャラクターを身近に感じさせるには、観客である私たちと同じ行動をしているところを描写するのが近道です。
あのような過酷なミッションを、何も食べずに次から次へとこなしていくキャラクターたちに実在感を求めることは難しいでしょう。
特に『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のキャラクターたちが置かれた状況は非常に特殊なものばかりであり、私たちが簡単に共感出来るようなものではありません。

窃盗や暴行・傷害を繰り返すアウトローで、両親が帝国の協力者であることから反乱軍にも利用されることになる主人公ジン・アーソ(演:フェリシティ・ジョーンズ)
大義のためと自分に言い聞かせながら、暗殺やスパイ等の汚い仕事をこなしてきたというキャシアン(演:ディエゴ・ルナ)。
故郷のジェダを救いたくて帝国を裏切ったものの、目の前でその故郷を消滅させられたボーディー(演:リズ・アーメッド)。
ジェダイに憧れ超人的な戦闘力を有する盲目の戦士チアルート(演:ドニ―・イエン)とその良き相棒ベイズ(演:チアン・ウェン)。

こうした特異なキャラクター達であっても、「食べる」という人間なら必ず行う行動を描いて見せることによって身近に感じることも出来ると思うのですが、そうした感情移入の接点が無いために彼らがまるでゲームキャラのように見えてしまうのです。

【チアルートとベイズ】

『ローグ・ワン』チアルート
「盲目の戦士チアルートは座頭市をモチーフにしているようだ」という前評判がありました。
実際に音だけで敵の位置を察知して瞬殺するそのアクションは座頭市をほうふつとさせてくれます。
チアルートはジェダイではないのですが、過去に登場したどのジェダイよりも強くてカッコ良いです。

『ローグ・ワン』ベイズ
しかしその反面、相棒であるベイズの存在と死はとても中途半端なものになっています。
正直なところ、最初に観た時にはこのベイズの最期が無駄死にのように思えていました。
相棒のチアルートの死を受けて自暴自棄に陥ったように見えたのです。

『ローグ・ワン』ベイズとチアルート
チアルートは、この時代ではおとぎ話になりつつあったフォースの存在を信じジェダイに強い憧れを持っていました。
そのせいもあってか、出撃前にジンが「フォースが共にあらんことを」と言った時には本当に嬉しそうな表情を見せています。
そして、超人的な戦闘力を発揮する男でありながら、戦う前には時折心細そうな表情を見せることもあるユニークなキャラクターでした。

ベイズはそのチアルートの相棒で、普段は「こいつはジェダイに憧れているだけのパラノイアだ」と馬鹿にしていました。
しかし、そのチアルートがまるで本物のジェダイのように振る舞って奇跡を成したのち戦死すると、ベイズは馬鹿にしていたはずのフォースの祈りを念仏のように唱え始めます。
「フォースは我と共に、我はフォースと共に」
そして多数のトルーパーと戦い傷ついて、友の亡骸を見ながら爆死します。

その爆死の瞬間、ベイズの顔のアップが挿入されるのですが3度目にこれを見た時に考えが浮かびました。
彼らを死なせる順番が違うのです。

まずベイズがチアルートを庇って戦死して、それを受けて意を決したチアルートがスイッチへと向かっていく構成であるべきです。
その展開であれば、歩いている間チアルートに銃弾が当たらなかったのも「ベイズが守ってくれている」という暗黙の了解が生まれて納得できるのではないでしょうか?。
また、時折小心な雰囲気も見せていたチアルートが大胆な行動に出て奇跡を起こすのも感動が増すような気がします。

私はベイズをチアルートの引き立て役のように思っていたのですが、彼らは二人で一つの存在とみるべきでした。
変な例えですが、あの二人は漫才のボケとツッコミなのです。
先にボケ役がいなくなったらツッコミ役はその存在意義を失うだけです。
漫才におけるツッコミ役は、オチをボケ役に決めさせてこそ輝くのです。

ドン・キホーテとサンチョ
ちなみに、この二人のモチーフは『ドン・キホーテ』のドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャとサンチョ・パンサのコンビだと思います。
騎士道に憧れるあまり自分を騎士だと思い込んでしまったドン・キホーテと、そんな主君に醒めた突っ込みをいれながらも付き従う従者サンチョ。
そのまんまですね。

【ダース・ベイダー】

ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー ベイダー
今作におけるダース・ベイダーの登場は決してファン・サービスなどではなく必然性がありました。
しかも、シリーズ全作品中で最恐にして最悪な残虐性を披露しています。

これまで「映画史上最高の悪役」と称されてきましたが、実はオリジナル三部作ではそれほど凶悪な姿は描かれていません。
特に『ジェダイの帰還』では、ルークに対する父親としての逡巡が芽生えたためか一人も人を殺していません。

本当に怖いベイダー卿を初めて見せてくれたこの作品に感謝です。
今後はオリジナル三部作を観ていても、ベイダー卿を怖い存在として実感することが出来そうです。

が、しかし。

今回のベイダーは少し動きが軽快すぎる気がしますね。
お風呂から上がってクレニックに面会するときの歩き方がスタスタスタスタと妙に足早なのです。
旧作のデビッド・プラウズの動きをもっと研究するべきでした。

【ラストシーンの順序】

本作をあくまでもスピン・オフ=格下と捉えて、オリジナルを偏重したようなラストの構成には初見の段階から不満でした。

ラストシーンでは、ジンたちローグ・ワン全員が最期を迎えたあと、名もなき兵士たちが受け取ったデータを手から手へと受け渡しながらダース・ベイダーの追撃を逃れてレイア姫に届けるまでが描かれます。
あのベイダーからデータを守り抜いた一般兵士たちの姿に感動しながらも、私は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のラストシーンはこっちじゃないはずだと思うのです。

『新たなる希望』に続く物語ということは分かっていますが、この『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の主役はジン・アーソでありローグ・ワンのメンバーたちなのです。
シーンの順序を入れ替えて、先にデータの争奪戦を描いたのちに、ジンとキャシアンが閃光に包まれていくところで終わりにするべきだと思っています。

【レイアの笑顔】

『ローグ・ワン』レイアCG
上記のラストが気に入らない理由がもう一つあります。
それは最後に出てきたレイア姫のこの表情です。

デス・スターの設計図が収められたメモリーカードを指して、「それは何ですか?」と訊く士官に「希望です」と答える彼女の笑顔でこの映画は終わります。
CGで若い頃のキャリー・フィッシャーを再現したそうですが、その技術力には心から感心します。

でもここで彼女が微笑んで見せるのは、この場面の演出としていかがなものかと思います。
そのデータを手に入れるまでにどれほどの人命が犠牲になったかをレイアが知らないはずはないのです。
これではただの世間知らずのお嬢様のようで、オイシイところだけを受け取ってニンマリしてるようにさえ見えてしまいます。

ここは無理に顔を見せなくても後姿だけで良かったのではないでしょうか。
我々『スター・ウォーズ』ファンには、ベイル・オーガナの「彼女なら大丈夫!」のセリフと後姿だけで十分なのです。


最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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Tag:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー ローグ・ワン

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